読  書    

戻る


本を読まない日はありません。どんなに疲れた日でも布団に入ったら本を手にし、寝落ちするまで読むのは至福。
大きな愉しみです。手元スタンドも点けっ放し、本を持ったまま寝ていることもあります。

令和6年、何か新しいことを始めるとしたら・・・その一つとして「読書」のページを作ってみました。

webでは住んでいる市の全区の図書館の本が検索できますし、1回に6冊だった貸し出しが10冊にもふえました。
ありがたいです。いろいろなジャンルの本を既定の2週間(から延長可の4週間)に渡って次々に読めるのは本当に
感謝・感謝です。

・・・と書き始めたものの、このページに記録するのはなかなか捗りません。

自宅の蔵書も多く、腕力のあるうちに整理をせねばと本棚に向かうと、手に取った本がまた面白くて・・・「あれ?
何しに来たんだっけ?」状態です。片付けも捗らない・・・。


  

書籍 著者 備考 感想
般若心経 瀬戸内寂聴
仏の教えを266文字に凝縮した「般若心経」の真髄を、自らの半生と重ね合わせて解き明かし、生きてゆく心の拠りどころを優しく語りかける。仏教入門。


自身のお寺「寂庵」の修行道場「サガノ・サンガ」で、法話としてとりあげた般若心経をまとめたものだそうです。
説明の仏教用語が覚えにくいのでなかなか進められなかったのですが、法話の前に語られる寂聴さんの近況やエピソードが楽しく、それらに惹かれて読了しました。

玄侑宗久さんの現代語訳「般若心経」ちくま新書 も読みました。寂聴さんとは切り口が異なりますが、たいへん興味深かったです。お二人の対談もかつて読んだ記憶です。

般若心経は時には仏壇で唱えることもあり、写経することもあります。日常に一節がふっと浮かぶこともあり、なんとなく分かった気になっているだけでしょうが、読んで良かったと思います。
たそがれてゆく子さん 伊藤比呂美

中公文庫  

エッセー集。婦人公論の2016・1・26〜
2018・4・10に「たそがれ・かわたれ」のタイトルで連載したものなどをまとめた。

婦人公論を購読していますので、親しみがあり、また年齢も近いので共感しするところ大でした。
人生おろおろ 伊藤比呂美

光文社文庫
新聞に連載中の身の上相談「比呂美の万事OK」を抜粋したものだそうです。
答えは快刀乱麻・痛快です。でも根底に優しさが感じられますし、人生の諸相を突いている。
「そうよ、うん!」と力付けられました。
生贄探し 中野信子
ヤマザキマリ

講談社
第一章 なぜ人は他人の目が怖いのか
         中野信子

第二章 対談 「あなたのため」という正義    
第三章 対談 日本人の生贄探し
第四章 対談 生の美意識の力
第五章 想像してみてほしい
         
おわりに     ヤマザキマリ      
人間の深層心理の洞察は深く多岐に渡り、おおいに学ばせていただきました。
出版は2021年4月です。コロナ禍での正義中毒にも触れられています。
旅ゆけば味わい深し 林望

産業編集センター
人の知らないところを見、なんでもない店で当たり前のものを食べて、いまだに知らずにいた無名の美味に見参する、そんなところに旅の醍醐味はある。
     まえがき「わが旅の作法」より

「イギリスはおいしい」以来のファンです。過去にご著作はけっこう読んでいます。
食べ物のエッセーも大好きです。
この本はだいたいが右頁にエッセー、左頁にお料理の写真となっていて、楽しく読みました。
ひぐらし先生、
俳句おしえてください。
堀本祐樹

NHK出版

師匠であるひぐらし先生と弟子のもずく君との対話形式で進んでいく俳句入門書。
約120句の俳句がちりばめられていて、それらをもとにして、季語や切字はもちろん、初心者が間違ったりしがちな表現上のさまざまな事柄をもずく君の問いに答えるかたちで、ひぐらし先生が柔らかい関西弁で導いていきます。
もずく君はひぐらし先生宅を訪問しては、先生のために料理を作るのですが、それらがほんとうに美味しそう・・・しかも旬の食材で、料理も季語になっています。
とても愉しめました。
女系図でみる
日本争乱史
大怩ミかり

新潮新書
【目次】   
第1講 乙巳の変と大化の改新  天皇の妻子が増える時
第2講 新羅親征  中大兄はなぜすぐに即位しなかったのか
第3講 壬申の乱  持統天皇の革新性
第4講 恵美押勝の乱  女系で栄え、女系で滅ぶ
第5講 薬子の変と母子処罰三事件  卑母腹と廃太子
第6講 平将門の乱と前九年・後三年の役  婚姻が招いた大争乱
第7講 保元の乱と源平合戦  悪口とお下がり妻
第8講 承久の乱  本当に女の戦いだったのか?
第9講 応仁の乱  相続の転換期が生んだ大乱
第10講 関ヶ原合戦・大坂の陣  淀殿悪女説の出所
第11講 戊辰戦争  女系図が恨みの連鎖をほどく
「大怩ミかり」さんは月刊誌「ハルメク」に現在連載中の「百人一首」の作者紹介で知りました。
百人一首の作者の裏話的な記述いっぱいの面白い内容です。
俄然この方の他の著作にも興味を持った次第です。


母親が誰かに注目した「女系図」を読み解けば、日本史のややこしい部分がみんな身内の争いだったと見えてくるというテーマで、もう本当に面白かったです。
女系図でみる驚きの
日本史
大怩ミかり
 
新潮新書

【目次】   
第1講 平家は本当に滅亡したのか
第2講 天皇にはなぜ姓がないのか
第3講 なぜ京都が都になったのか
第4講 紫式部の名前はなぜ分からないのか
第5講 光源氏はなぜ天皇になれなかったのか    
第6講 平安貴族はなぜ「兄弟」「姉妹」だらけなのか
第7講 「高貴な処女」伊勢斎宮の密通は、なぜ事件化したのか
第8講 貴族はなぜ近親姦だらけなのか
第9講 頼朝はなぜ、義経を殺さねばならなかったのか
第10講 徳川将軍家はなぜ女系図が作れないのか
「母親が誰か?」に注目した「女系図」でたどると、日本史の見え方が一変する。
著者は学生の頃から系図作成フェチだったそうで、それらの系図を駆使しての歴史解釈が「目から鱗」おもしろかったです。
源氏物語の教え 
もし紫式部があなたの家庭教師だったら
大怩ミかり

筑摩書房 
  
第1章 姫君の家庭教師・紫式部の教育方針(『源氏物語』の時代 女が生きるのは大変だった
紫式部はなぜ『源氏物語』を書いたのか? 紫式部が「物語」を教材に選んだ理由)

第2章 男に大事にされ、かつ生き延びるには 紫式部が考える理想の女 「男に愛される女」が死ぬという設定 紫式部の真意
源氏の育てた理想の女・紫の上 男に愛され、嫉妬に殺されないためには
自分を大事にした明石の君 身分以上の結婚と出世をするには
決断力の女・藤壺中宮 人の上に立つには
『源氏物語』に描かれる反面教師 時代後れな「理想の女」)

第3章 職場で生き抜くには 人に認められる女になるための処世術(何がなくても自己肯定
セクハラ満載の社会で女が生き延びるには
つまらぬことばも喋り方しだい
とにかく足を引っぱられないようにせよ
赤の他人の親切には感謝の気持ちを)

第4章 死にたいあなたに あなたを人間扱いしない者とはつき合うな(ダメ女たちの物語・宇治十帖;『源氏物語』の教訓)
おわりに 「ダメ女」は実はダメじゃない(かけがえのない人などいないという教え
誰かの「身代わり」にされた女が「不倫」をする  人から見てダメだっていい)

私の場合「源氏物語が好きか?」というと、それほどでもないので「ここから教訓を引き出すのはどうなのよ、無理があるんじゃないかな」という気がしました。
読んでみて納得です。

でも同じ著者の『源氏の男はみんなサイテー
という作品の方に共感するのではないかしら、次に読んでみようと思いました。

勿論、平安時代の生活や文化、多様な和歌について知るのには源氏物語は素晴らしいと思います。
決断力の女・藤壺中宮  
 人の上に立つには』の解釈には「なるほどな」と思いました。

一句悠々
私の愛唱句
正木ゆう子

春秋社
【目次】   
秋の航一大紺円盤の中(中村草田男)
恋ともちがふ紅葉の岸をともにして(飯島晴子)
しぐるゝや駅に西口東口(安住敦)
陽の裏の光いづこへ浮寝鳥(高山れおな)
冬菊のまとふはおのがひかりのみ(水原秋櫻子)
冬のバッハ無伴奏だいこんおろし(中西ひろ美)
隙間風その数条を熟知せり(相生垣瓜人
ゆきふるといひしばかりの人しづか(室生犀星)
老人に十種類あり年の暮(岩下四十雀)
毛布より片眉出でし未来かな(今井聖)〔ほか〕
俳句を初めて日も浅い身で口幅ったい事は言えないのですが、名句と言われる句なのに「どこがいいんだろう?」「意味分からない〜」のと「ある、ある」「分かる、分かる」というのとが半々ぐらいにあります。浅学というか、目が昏いというか。
それで鑑賞法を学ぶべく、この本を読みました。

この方の感性も独特で、やっぱりついていけない句や解釈もありましたが、それはそれ。こちらの受け皿が狭い&浅いからでしょう。
鑑賞力については追い追いにということで・・・めげずに数を読むことにします。
もちろん好きな句にも遭いました。
もう泣かない
電気毛布は裏切らない
神野紗希

日本経済新聞出版社

【目次】   
第1章 ここもまた誰かの故郷氷水 夏(季節を感じとる力;全部やだ男 ほか)
第2章 檸檬切る記憶の輪郭はひかり 秋(寂しいと言って;沈黙の詩、静寂の世界 ほか)
第3章 負けてもいいよ私が蜜柑むいてあげる 冬(逢いたかったよ;私の働き方改革 ほか)
第4章 短めが好きマフラーも言の葉も        俳句(しづかなる水;じいんじいん ほか)
第5章 母乳ってたんぽぽの色雲は春 春(薄氷を踏んで;わたしの子規 ほか)


俳句甲子園世代の旗手と言われる方で、初エッセイ集だそうです。テレビで拝見したことがあります。お若くて、ぴちぴちした可愛らしい外見なのに、吟行の同行者の句をけっこう手厳しく、かつ笑顔で採点していらしたのが「おっ!」と印象的でした。経歴を拝見したら大学院の博士課程を修了されていて、お若くても実力もキャリアもおありになるのですね。
このエッセイの中には「吾子俳句」もたくさんありますが、研鑽を積んだ老成した目にも裏付けされている。今の俳句界を牽引する若い実力者ということが納得できました。楽しみな方ですね。
名句の鑑賞法を知りたい私にとっては大変参考にもなりました